ザもしくはジ

沖縄の話とかメンヘラの話とか全然関係ない話とか

VS呉服屋その弐

ある日呉服屋さんから電話が掛かってきて京都でお食事会と着物の展覧会があるので食事しに来ませんかとお誘いがあって、これはこの間だ高い着物を買ったからそのお礼替わりだなと思い二つ返事でいいですよと答えた。彼女も美味しい食事食べられると喜んでいた。

 

当日待ち合わせの京都の駅に着くとあの店員さんがいつものニコニコ笑顔で迎えてくれた。「じゃあ行きましょか」と言われ僕達はタクシーで会場に向かった。

車中では色々な褒め言葉が並び僕等は素直に喜んでいた。食事もできていい気分になって高い着物買うとこんな事があるんだなと思っていたら会場に着いた。そこは風格のある建物で高いなと一瞬でわかった。

さあさあこちらこちらと言われるがまま着いていくと食事する場所に着きどうぞどうぞと次から次へと料理がでてきてキャッキャと喜んでいた。

食事が終わると展覧会を見に行きましょうという事になり、いいものを見ると目が肥えるって言うしなと思いついていった。そこは広い場所で無数の着物が置いてあり僕等は少ない知識をフル活動させこの小紋はいいですねぇとかこの染めはいいですねぇとか覚えたての言葉を舐められない様に使っていると店員さんが「お目が高いわぁ」とか「見る目ありますわぁ」とか褒め言葉を重ねてくるので僕達は沢山の褒め言葉と美味しい食事とで大満足でさあ帰りましょうと思っていたら「どれが一番気に入りはった?」と聞いてきたので彼女が反物を持ってきた。それは紫外線に当たると柄が浮き出てきて日陰と日向で柄が違うというちょっと変わった反物で僕もそれは面白いなぁと見ていたらお兄さんが寄ってきて「ええもん見つけはりましたなぁ」と言ってきたのでウンウンと頷いていたらいつの間にか彼女はあれよあれよという間にクルクルと着物をあてられ姿見に映っていた。鏡越しに彼女を見ているとお兄さんが「よう似合てはるやないですかぁ」と言ってきたので「そうですねぇ」と適当に答えていたら何やら書き出した。「ん?」と思っているとまさかの見積書で僕はこれは夢かと疑うほど驚いた ちょっと待てと。今日は食事するだけじゃないのかと。着物は見物するだけって言ってたじゃないかと。小一時間問い詰めたいと思っていたら、ニコニコの店員さんも彼女に褒め言葉を重ね続け彼女は複雑そうな笑顔で受け答えしていた。気が付くと僕と彼女はニコニコの店員さんとお兄さんと姿見のトライアングルフォーメーションをとられていて僕達はいつのまにか逃げられなくなっていた。そして丁寧に「はいどうぞ」と見積書を渡されしかたなくチラッと見てみるとそこには小学生が遊びで書いた様な金額が書かれていて僕の手は震えた。

「嘘でしょ」「ほんまですわ」「高すぎちゃいます?」「ここの着物は高くてねぇ」笑顔のない会話が続いている横で彼女は僕のボキャブラリを超える程の褒め言葉を重ねられていた。僕は彼女をとりあえずそのクルクルをとりなさいと言い、畳の上に座らせ「ちょっとこれ見てみ」「えぇぇぇ」とさすがの彼女もびっくりして目がクルクルして「やろ」「うん」と珍しく二人の意見が一致したので「今回は遠慮しときますわ」と言うとニコニコ店員さんのニコニコは消え、初めから笑ってなかったお兄さんはメガネをクイッと上げ「まあゆっくり考えてくれてええから」と言われ僕等はゆっくり考えても一緒なのになぁと思いながら時間だけが過ぎた。その間だもずっとニコニコの消えた店員さんの説得は続き、お兄さんの脅迫ギリギリのトークは続き、気が付くと小一時間問い詰められたのは僕等の方だったという事になっていてわけわかんないやと思いながら彼女をふと見るとお兄さんの膝を摩りながら「勉強してーやー」と交渉し始めていて「えっ」「えっ」と僕は二度見した。本気かと。正気かと。彼女に念を送っているとお兄さんが近づいてきて「彼女が彼氏にお金はまかせてるから彼氏に聞いて下さいって言うてはってなぁ」と本日もう何回目かわからないびっくりをして僕は半泣きで「なんぼになりました?」と聞くとさっきの小学生が遊びで書いたみたいな金額が小学生に大金って聞いたら幾らだと思うって聞いたら答えそうな金額まで下がっていて、でも僕にとってはみかんとポンカン位の差しかなく問題外だったんだけれど、まさかの彼女の裏切りで敵側にまわっていたので笑ってないのは僕だけという窮地に追い込まれてもう逃げられないなと思うけど「お金ないんで」と最終フレーズを小声で震えながら伝えると「ローン組めまっせ」と言う返しがありジ・エンド「じゃあ最長で」と告げる

お兄さんは「呉服屋なめたらあかんで」と言い、店員さんはニコニコが戻り彼女はウフッとウインクをしてきた

「じゃあ1週間後位になりますわ」とニコニコに言われそれ知ってるぅ!と心の中で叫び、大人の世界の怖さを一つ学び、僕は階段を一段上った。